2014/07/29

大相撲とグラントリノ


机に忍ばせている力士サイン帳。右は高安。左は旭天鵬。


白鵬が30度目の優勝を決めた名古屋場所は大熱戦でしたね。個人的には怪我、角番を乗り越えての琴奨菊と久しぶりに二桁勝利に乗せた高安に大きな拍手を送りたいと思います。


それと今場所でチェコ出身の力士、隆の山が引退しました。

あまり相撲を観ない方でも細身の白人が土俵に上がっているのを観て驚いた経験があるかもしれませんね。見た目の逆インパクトと愚直な取組は感情を揺さぶるものがありました。引退後は相撲から離れ母国に帰って生活するとのことなので、ぜひ新たなステージでチェコと日本の架け橋として活躍してくれることを願っています。



一方で少し複雑な気持ちになるニュースもあります。

北の湖理事長、明言「白鵬一代年寄」資格取得は帰化が絶対条件

"年寄名跡を取得する協会の規定は日本国籍を有する者。白鵬はモンゴル国籍で年寄名跡を取得する資格を満たしていない。このため一代年寄の贈呈も規定外になる。理事長は今後、大鵬の32回を超え歴代1位の優勝回数に達しても「変えることはありません」。"




また優勝争いに絡めなかった日馬富士と鶴竜は横綱審議委員会から「みっともない」と罵られる反面、豪栄道が昇進目安である3場所33勝に届かない中で大関にサプライズとも言える昇進を果たしています。(これに関しては横綱昇進前から現在に至るまで続く日馬富士に対しての審議会の厳しすぎる仕打ちが問題をより鮮明化させています)



今日本の大相撲に外国人力士の活躍は不可欠です。その外国人力士と日本人力士の差別的待遇と言っても過言でない協会、審査会の態度には一相撲ファンとして残念でなりません。そしてこの相撲協会のように曖昧なルールを作り、自らの生存のため恣意的な運用をする、というやり方、同時に勝負の世界で負けた力士にリアリズムを乗せた「弱い」ではなく、情緒的な「みっともない」という言葉を選ぶのはある種、日本文化の集約かもしれません。


このように相撲業界はじめ日本における保守的風情とよい比較になるのがアメリカの映画"グラントリノ"ではないでしょうか。


グラントリノの構造をみると、移民の退役軍人でデトロイトの自動車工場に長年勤務イーストウッド演じる主人公=保守的アメリカ人の象徴。その彼が大切にしている愛車のフォード • グラントリノは戦後アメリカの産業中心であり、アメリカの伝統そのもののメタファーとして機能しているのは想像に難く有りません。

そのアメリカの伝統であるフォード車を次の移民世代であるアジア系の少年に託して死んでいきます。


もちろんアメリカにもティーパーティーのような排外的思想を持つコミュニティも一定数存在しますが、この映画はアメリカ(とその作り手)らしい自由主義的な思想が色濃く表現されています。


グラントリノは旺盛を極めた自国の自動車産業が80年代以降日本をはじめとする外国メーカーの台頭により没落し、製造業に固執するのをやめIT産業など新しい流れを積極的に受け入れて再び発展させていこうという歴史的流れと符合する映画でした。そこに至るまでアメリカも日本と同様、生き残りために今ある国内製造業を自由競争の側面から逸脱して優遇し復活させようという流れもあったようです。しかしその流れを断ち切り公正な自由競争こそ国を再興させると信じて今までグローバル化を推進させてきたんだと思います。



振り返って相撲業界。彼等も生き残りに必死だと思いますが、日本人の相撲離れが進む中、グローバルに事業を展開するのは当然の流れだと思いますし、実際海外巡業など様々なことを行っています。だからこそ外国人力士の差別は問題なのです。


もちろん頭ごなしに伝統的側面を否定するのも間違いですし、海外に市場や人材を求めないのであれば差別的待遇も合理的な戦略になるかもしれません。



しかし大相撲は今や立派なグローバルな団体。グローバル事業において国籍や人種の差別は御法度。国籍の違う顧客やビジネスパートナーの信頼を失い、しまいには人種差別的レッテルを貼られ第三者の信用まで失いかねません。つまり大相撲協会の問題は既に多国籍組織になっているにも関わらず、日本国内のみで通用する曖昧なルールを「郷に入らば郷に従え」と外国人にも強要していることです。


引退したブルガリア出身の琴欧州、若手期待のエジプト出身の大砂嵐、もちろん前述の隆の山だってそうです。彼等のおかげで我々相撲ファンはよくわからない遠い異国を身近に感じたりできるのです。そして彼等のような夢と希望を持って日本にやってきた外国人の若者が「日本の大相撲は利権うずまく伏魔殿であった」と母国へ帰って喧伝することがないよう、そして何より大相撲が世界に誇れる日本発の国際団体となるよう、ルールの明確化と適用厳格化を願うばかりです。





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